フリーアドレスオフィスのメリット・デメリット
フリーアドレスオフィスとは、固定席を設けず、空いている席を自由に選んで仕事をするオフィスを指します。“フリーアドレス”は和製英語で、アメリカでは、ノンテリトリアルオフィス、シェアードオフィスまたはホテリングオフィスと呼ばれています。
フリーアドレスオフィスは、オフィス不在者のデスクを在席者が使用することで、広々としたデスクで作業を行うことができるという考え方から生まれました。
たとえば在席者が50%であれば、デスク2台分の面積で作業ができることになります。また、広さの問題だけではなく、オフィス賃料や家具などにかかるコストが削減されるという面も注目されています。
新たなコミュニケーションのかたち
フリーアドレスオフィスは、外出や席を離れる機会が多い営業系の企業で多くみられますが、とりわけ経費の削減を狙う企業で採用されています。ワーカーの在籍数より少ない数のデスクを設置し、共用して使用することで、最大70%のコスト削減を実現した企業があります。
人事異動があってもオフィスのレイアウトを変更する必要がないこともメリットのひとつです。また、オフィス内のコミュニケーションを活性化させる効果があるといわれています。固定席を設けないことにより、部署や年齢の垣根を越えてコミュニケーションをとる機会が増えます。ふと気付くと隣に上司が座っているということも珍しくありません。慣れるまでは驚くかもしれませんが、新しい気付きや人脈づくりへのきっかけになるでしょう。実績のある先輩ワーカー、高いスキルをもつワーカーのそばに席をとり学びを得ることもできます。
また、ナレッジマネジメント(知的財産の管理)を促進するために、マグネットスペースと呼ばれる、共用スペース(リフレッシュ、社内打合せ)を設置し、暗黙知を積極的に共有できる仕組みづくりをするとより効果的です。
フリーアドレスの導入は、自然と個人が動くように、仕掛けを施し、経営者の理想とする経営戦略を実現する絶好の機会となります。
働き方の変化がうまれるオフィス
フリーアドレスオフィスでは、ロッカールームの設置が欠かせません。出社時は私物などを個人のロッカーに収納してからデスクに向かいます。退社時は、ロッカーに書類や資料などをしまい、デスクの上は空にすることが原則です。
従来のオフィスでは、未処理の書類や事務用品で雑然としていたオフィスもフリーアドレスオフィスを導入することでゆとりある空間に生まれ変わります。
また、フリーアドレスオフィスを導入したことをきっかけに、紙の書類を必要最低限に抑える“ペーパーレス化”を実施するオフィスが多くみられます。これは、書類が必要になるたびにロッカーへ戻ったり、ノートパソコンと紙の書類を持ち歩きながらオフィス内を移動することが重要情報の流出・紛失に繋がる恐れがあるからです。
オフィスのペーパーレス化は、情報の検索性を向上させ業務効率を高めるだけではなく、省スペース化、コスト削減など多くのメリットが期待できます。
「今」のトレンドを取り入れたオフィスにすることにより、リクルーティング(人材採用)力を高め、積極的に人材を採用することができるようになるため、組織の拡大にも貢献します。
ただし、フリーアドレスオフィスにもデメリットがあります。
フリーアドレスオフィスへの変更は、現在の働き方からの変化を強制することになります。若い世代への浸透は早いですが、従来型オフィスで長く働いていた中高年世代は、馴染めない可能性があります。フリーアドレスでは、全てがオープンな環境となるため、プライバシーが無く、疎外感や不安感が生じ、ストレスを感じることも少なくなく、結果として業務効率が一時的に落ちるとの調査結果も出ています。
そためには、導入のためのミーティングやサポート、運用ルールの明確化を行う必要があります。
また、ペーパーレスを実現するためには設備の増強、管理方法の変更が必要です。ペーパーレス化の実現には社員及び管理者の多大な努力が必要になります。
フリーアドレスオフィスの導入には、デメリットとなる点もありますが、見た目がかっこよく「働きたいオフィス」「自慢したいオフィス」という社員側メリットと、スペースの効率化による家賃圧縮、ナレッジマネジメントの促進、積極的人材採用という経営管理者側メリットがあり多くの企業で導入されはじめています。